ドイツAAR -EINLEITUNG- *INTERMEZZO [#w972da11] '''─1942年6月16日 現地時間05:14 インド洋セイロン島沖''' #ref(boat.jpg,wrap,around,right,nolink,Boat) 「…敵影を確認。方位280、距離10マイル。」 「目標進路110。敵速力10ノット。ダイドー級巡洋艦と思われます」 「小型艦…トライバル級駆逐艦を確認。輪形陣です」 「急速潜航。潜望鏡深度急げ」 「ヤボール」 哨戒中だったドイツ海軍第3潜水艦隊所属のU-103が発見したのは、軽巡洋艦を中心とした英艦隊だった。U-boatの主任務は通商破壊であり、まして駆逐艦と軽巡洋艦など危険を冒してまで狩る相手ではない。だが艦長の指示した深度は潜望鏡深度─攻撃態勢だった。 輪形陣は中心にある艦、多くは空母など貴重な艦を守るために採られる艦隊陣形である。たとえ主力艦をことごとく失った英海軍であっても、それを軽巡洋艦のために採るなど普通では考えられない。その異常が艦長に単純な回避行動を取らせなかった。 Under construction 「機関停止。…&ruby(静かに){Ruhe bitte};」 護衛の駆逐艦は基本的に潜水艦の天敵である。だがトライバル級はそもそもが対潜駆逐艦ではないし、10ノットで駆ける艦からでは聴音はほぼ不可能だ。 「発射管1から4開け。4門斉射、発射角5度」 日が昇る直前の薄暮。波打つ海面から潜望鏡を発見することは難しい。 「発射」 航跡の出ないG7e魚雷が4本。狭い扇状に広がりながら獲物に向かう。 「潜望鏡下げ。微速前進、急速潜航。離脱する。」 敵艦の撃破を呑気に眺めていることはできない。発射位置からは速やかに離れるべきだ。静かに、できるだけ遠くに。 U-103が確認したのは魚雷一本の炸裂音だけ、日誌には「戦果不明」と書かれた。 だから結局、彼らは戦争が終わるまでその戦果を知らずに終わった。 ─ダイドー級巡洋艦ハーマイオニー、そして搭乗していた英国王ジョージ6世を葬ったことに。 #br '''─1942年6月21日 現地時間08:14 英領ニューファンドランド''' カナダ、および北米の英領はブリテン島を失った連合王国にとって、最も重要な植民地であるとともに、大西洋によって敵国から隔絶した安全な地として、多くの難民が押し寄せ混沌とした地域となっていた。 その中でも英領ニューファンドランドは北米の最東端に位置する最前防衛線であり、またヨーロッパへの帰還を果たすための最重要拠点であった。 #ref(Lieutenant-HRH-Princess.png,wrap,around,nolink) ─ウィンザー中尉、すなわち王女エリザベスが戦時協力として従軍していたのも、ここニューファンドランド島であった。 ドイツ軍がペルシャ国境を越えたのが4月7日。空挺部隊を大規模に使用した侵攻はあまりにも速く、インドは瞬く間に席巻された。王室一家は巡洋艦で脱出し…彼女ひとりを残して、全滅した。 父と母、そしてまだ12歳だった妹を全て失ったエリザベスは、知らせを受けたときあまりの事に信じられず、ただ絶句して立ちつくしていた。 #clear …それが、知らせをもたらした男、英国首相ウィンストン・チャーチルには、悲劇に動じない毅然とした態度に見えたのだろうか。 彼が次に告げた言葉は、もしかすると、家族の悲劇の知らせより悪いものだったかもしれない。 「…従って、陛下は今や英国王、インドの帝王。連合王国の主となられました」 家族を失った16歳の少女は、滅び行く帝国の女王となった。そして、戦いはまだ終わってはいない。 #br CENTER:''ドイツAAR -EINLEITUNG-''[[''<<ドイツ編へ''>ドイツAAR -EINLEITUNG-]]|■|[[''英国編へ>>''>帝国の逆襲 Empire Strike Back]]''帝国の逆襲 Empire Strike Back'' |